2014年11月22日

【映画祭レポート(2014.11.2 アルテリオ映像館)】「今こそ、台湾映画!」特集フィナーレへ! 映画を通して知る台湾の歴史と現在

映画祭レポート、今回は11/2(日)の「アルテリオ映像館」の模様をお伝えします。連休2日目、前日の雨は上がりました!

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秋もいよいよ深まってきました

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フル稼働のシネマウマ〜

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あきた十文字映画祭様、NPOしんゆり芸術のまちづくり様からのお花が会期中の会場を彩りました。誠にありがとうございました!


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この日1本目は「しんゆりセレクション」より『グォさんの仮装大賞』。こちらは涙あり、笑いありの心温まる中国映画。午前中から多くのお客さまにお越しいただきました!



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2本目は『恋恋風塵』。台湾の名匠ホウ・シャオシェンの1986年の作品です。上映後、映画評論家で日本映画大学学長の佐藤忠男さんのゲストトークが行われました。

本作については、「まるで日本と変わらない。日本人を純粋にしたような…日本人を田舎に帰して、昔の生活に戻すとこうなる、というような生活が、実に、それなりの誇りを込めて描かれている。我々は見ていて気持ちがいいです」と佐藤さん。

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佐藤さんによると、「台湾映画は世界で一番日本映画に近い」そうです。本作は「自分と結婚してくれるものだと思ってた女の子が、違う男の人と結婚しちゃって泣く話。こういうところは日本と似ていると思います。つまり、婚約したわけではないが、親しく付き合っていたわけだから、当然、結婚してくれるものだとばかり思っていた。『I love you』などという決まり文句は日本語にはないが、そういう気風は、台湾も同じですね。『そういうときはちゃんと約束しておくものだ』という習慣がない」「そういうことを本人同士がハッキリさせない。『ハッキリするのは恥ずかしい』という感覚は、まったく日本と共有しております」。

また、男の主人公・アワンが兵役に出ますが、台湾映画で「兵役」が描かれる際の特徴があるそうです。それは「中途半端な青春」。「大学に行くにしろ、就職するにしろ、兵役を終えるまでは、青春時代はまだハンパな状態なんですね。若者は『一体、自分は何なんだろう』と、ブラブラしているより仕方がないという感じ。そういう青春を扱った映画が、台湾映画には多いです」。

「本作は、非常に情感豊かな…つまり生活のすみずみを非常に細やかに、愛着を持って見つめて、そして、そういうポジションで見れば、どの人もどの人もみんなそれぞれ、いい人に見える。そういう意味では、まれに見る作品であると思います」。こうした成瀬巳喜男監督、小津安二郎監督などの日本映画にも通じる、情感豊かな作品で、台湾映画は次第に世界に知られるようになったとのこと。

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ホウ・シャオシェン監督やをはじめとする“台湾ニューウェイブ”と呼ばれる世代の監督たちが、80年代に注目を集めるまでの「台湾映画」の紆余曲折について、貴重なお話が語られました。「台湾映画」の紆余曲折は、日本と中国による占領で複雑化した台湾人のアイデンティティーと密接な関係がありました。

日清戦争後の1895年から、1945年の日本の敗戦まで、台湾は日本の植民地でした。日本は台湾人に映画を作らせず、台湾人に日本語教育を徹底する強圧的な政治を行いました。映画も「『日本語を勉強すれば日本映画を観られる、だから中国語の映画を見る必要はない』と」。日本の敗戦後、中国国民党軍が台湾にやってきて、台湾人は当初、解放軍と思って歓迎したのですが、中国軍の厳しい取締りと言論統制に遭いました。その後起きた暴動をきっかけに、国民党は知識人狩りを行いました。ホウ・シャオシェン監督のヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞作『非情城市』(1989)はその当時を描いた作品だそうです。

日本の植民地化政策に続く中国国民党軍の弾圧・戒厳令で、台湾人のアイデンティティーは複雑化しました。

「台湾の民衆は、自分たちがどう生きるべきかわからなくなった。つまり日本や中国、そのどちらにも翻弄され、『俺たちはどうしたらいいんだ』ということになったわけです」。戒厳令下の生活は何十年も続き、台湾は苦難の時代を過ごしてきました。やがて87年に戒厳令が解除され、台湾の独自性や文化の開放を求める動きが生まれた頃に作られたのが、『恋恋風塵』だったと、佐藤さんは語ります。

また、劇中に使われていたある映画に関する、台湾映画史の貴重なお話も。野外上映会のシーンで流れていた映画は『あひるを飼う家』(1965)。当時、国民党政府が北京語で奨励して作らせた「健康写実路線」映画の中の最大のヒット作と言われた作品です。

佐藤さんによると、国民党政府は、一緒に本土から逃れて台湾に渡ってきた上海の映画人に、北京語で映画を作らせていました。多言語国家の中国で、映画は言語統一に大きな役割を果たしており、国家の文化を統一する意図で「トーキー映画は北京語」が必須となっていました。国民党政府は台湾語の映画には補助金を出さず、北京語の映画には補助金を出すという政策を行い、日本敗戦後にヒットしていた台湾人による台湾語の映画はほとんど無くなっていったそうです。

そんな時代に生まれた『あひるを飼う家』、実はこの映画の助監督は若き日のホウ・シャオシェン!「健康写実路線」は当時の台湾の映画批評家たちからは「健康で写実などできるわけがない」と揶揄されていましたが、「それにうまい解決を与えたのがホウ・シャオシェンたち若手監督」だったそうです。

「ホウ・シャオシェンら若手監督たちが何をやったかというと、例えば『恋恋風塵』では、家庭生活では台湾語を喋り、学校や会社、役所にいると北京語を喋っている、そういう言葉の使い分けをやりました」。

「それが映画を見る人に対して、本当に親切かどうかわかりません。片方の言葉がわからない人がいっぱいいるんですから。けれども、これは本当のリアリズムなんです。台湾の現実の生活がそうなんですから。そういう映画を作るようになってから、台湾映画の水準はがぜん、急に上がりました。つまり本当のリアリズムで映画を作ることを、80年代当時、若い監督たちはやるようになりました」。

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複雑化した台湾人のアイデンティティー、その後の文化解放の時代に生まれたホウ・シャオシェンの『恋恋風塵』。映画祭で上映した台湾映画『GF*BF』も戒厳令時代から民主化に向かう時代の台湾を舞台にした物語でしたが、佐藤氏のお話は今年の特集「今こそ、台湾映画!」を総括してくださるような、聞き応えのあるものでした。

まだまだ、お話を伺いたかったのですが、お時間が来てしまい…。プレゼンターのシネマウマが登場ー!
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シネマウマ、今回は喋りました。「佐藤先生、いつもありがとうございます。また来年もぜひいらしてください♪」

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トーク終了後も、話に花が咲いていました。佐藤さんを囲んで質問したりサインをお願いするお客さまの輪が広がり、映画祭らしい光景でした。

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佐藤さん、今年もお話ありがとうございました!



3本目は、今年の目玉「いまこそ、台湾映画!」特集のラストを飾る『南風』

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おかげさまで満席の大盛況!上映後は萩生田宏治監督をお招きし、ゲストトークを行いました。

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本作は台北から日月潭まで、台湾の美しい海岸線の風景をたどりながらサイクリングしていく物語ですが、監督も大学時代に北海道一周や、四国、九州などをサイクリングしたことがあったそうです。

とはいえ、日本=台湾合作の監督を務める不安はなかったのでしょうか?萩生田監督は、林海象監督の『わが人生最悪の時』で助監督を務めていたとき、永瀬正敏さんの相手役が台湾の俳優さんであったり、『海ほおずき』(1996)で唐十郎さん、原田芳雄さんなどと台湾ロケをしたりと、日台合作での映画制作は経験があり、「今回、自分が台湾に行って、何ができるかをチャレンジしたいと思って」監督を受けたそうです。

台湾では、大学4年生ぐらいになると、台湾を1周するのが流行っているそうです。「『自分の国をちゃんと見て見たい』みたいなところが、本気であるみたいなんですよ。自分たちの国の美しい景色を、自分の足で廻って見てみたい、と。さっき、『恋恋風塵』を拝見した後の佐藤忠男先生のお話を聞いて、やっぱり、国のアイデンティティー、『自分は台湾に住んだ人としてどうしようか』みたいな意識は本当に強いんだなあと思いました」。

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ロケハンは「1ヵ月後に撮影開始」という慌しさだったそうです。カメラマン・長田勇市さんが沖縄本島より台湾に近い石垣島出身で、「7月1日〜10日の間がいちばんキレイだ」と一言。「ホントかい、と思ったんですけれど(笑)、本当にそうでした。10日を過ぎたら雨季に入って雨も降り始めるし。本当に、お昼頃になるとちょっと崩れてくるんですが、午前中の天気がものすごく、恐ろしいぐらいにキレイで」。

キャストについては? ヒロインのテレサ・チーさんは台湾では有名な青春映画『九月に降る風』でデビュー、今やハリウッド映画『トランスフォーマー/ロストエイジ』にも出演する、世界が注目する女優。『南風』では天真爛漫なイメージですが、実際も役柄と似ていたとか。「喋ると、「好(ハオ)」「好(ハオ)」って。「わかった」という意味らしいんですけど。かわいくそう言うんだけど、実際、全然別のことをやる。ホントに「好」か?みたいな(笑)」。しかし、撮影当時は20代ということもあり、中学校に行って学生を観察し、10代の感覚を研究するなど、熱心な一面があったそうです。

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本作は黒川芽以さん演じるもうひとりのヒロイン・藍子と、テレサ・チーさん演じるトントンの女性同士の友情物語でもあります。女性同士の友情の描き方は、役者さんの様子を見て、また話を聞きながら演出していったとのこと。黒川さんは8歳から女優をやっていて、すでにベテラン。「現場に若い女優さんがいると、既に現場のいろいろを読めてしまう自分がいて、相手にゆずってしまって…」という、映画の藍子と同じような「仕事のできる女の悩み」のようなものを黒川さんから聞いているうちに、台本で決まっていた「30代」の設定を改めるなど、話を聞きながら演出を変えていったそう。「ほぼ順取りで、黒川さんも、だんだん、テレサとの距離やこの作品でやりたいことが出てきたみたいだったから、そういうのをスクリーンに映して皆さんにお届けしたほうが、面白いんじゃないかと思って」。

上海でも撮影経験がある萩生田監督。海外と日本の撮影で違うことは?「すごく感じるのは、もしかしたら日本の現場が一番特殊なのかなあ、と。僕らは、効率的にやるのはすごく上手。僕も、『効率的にやっていかないとこなせていけない』というところがある。ただ、ちょっと、『効率的になること』が目的になっちゃう。それは、監督が弱い、という話になるんですが、『この時間で何をやるか』を目的化しちゃうみたいなところって、もしかしたらあるのかなって」。

台湾のスタッフたちのおおらかな仕事ぶりに触れ、そう感じたとか。道に迷っても笑っているスタッフ、ビンロウを噛むと20qスピードの上がる運転手さん、普段は映画評論の仕事でよく喋るのに、ロケ交渉などの場では全然喋らずケンカして帰ってくる制作部さんなど、「なんだか、忘れられない人がすごく多い感じがあります(笑)」。

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萩生田監督は、6年前に『コドモのコドモ』を撮ってから、難しい題材を映画で伝える手ごたえとともに、伝える難しさを感じていたこともあったそうです。「『次、何やろう』と考えているときに、少し慎重になり過ぎているところが自分でも気づかずあったんですね。藍子じゃないですが、ちょっと『前に進めなくなってるなあ』という感じはあって。今回、『藍子が旅をしているそのものを撮っていこう』と思い切れたのは、やっぱり台湾の人たちのおおらかな感じ。思い切って、その場その場の発想を意外と受け入れてくれたというのがありました。『しょうがないなあ』と思ってるのかもしれないが、そういうおおらかなところで一緒にやれて、作品として乗り越えられたことは、ちょっと子どもっぽい言い方ですが、台湾の中から力をもらえたんじゃないかなと思っております」。

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お客さまからは「日本人と、台湾人のスタッフの比率はどれくらい?」(「6(日本):4(台湾)ぐらいで始めたが、撮影10日目ではなぜか台湾のスタッフが増えていた(笑)」)、「台湾、中国などアジアの国々の合作に監督として大きな意図、意義はあるのでしょうか?」(「台湾の場合、政府の文化交流事業とは別のところで唐十郎さん、林海象さんなどが一歩一歩現地と築いてきたものがある。あるなら、がぜんやる。誰かが小さくても残していかないと、という意識は仕事のモチベーションとしてある」)、などなど、次々に質問が飛び出し、活発な質疑応答タイムとなりました。

最後に、プレゼンター・シネマウマが登場♪
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監督に握手していただいて感激ウマ☆ありがとうございました!

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トーク終了後も、萩生田監督に次々とサインを求めるお客さまの輪がロビーに広がっていました!

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萩生田監督、シネマウマ、映画祭代表・白鳥あかね、市民プロデューサー(司会)・みなと

これにて今年の台湾映画特集は終了。台湾の昔と今を映画を通して知る、大盛況、充実のゲストトークリレーとなりました。萩生田監督、ありがとうございました!



さて、ガラリと雰囲気を変え、今日のラストは『濡れた欲情 特出し21人』。白鳥あかね・当映画祭代表の自伝『スクリプターはストリッパーではありません』のタイトルにもなった逸話のある作品です。

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「最前列、かぶりつきでどうぞ!」とご案内の市民プロデューサー

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『スクリプターはストリッパーではありません』を自ら宣伝の白鳥あかね代表。名著ですのでぜひお読みください!

以上、11/2 映像館レポートでした!
posted by シネマウマ at 10:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭レポート
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