2014年11月30日

【映画祭レポート (2014.11.3 アルテリオ映像館A)】『野良猫ロック 暴走集団'71』ついに藤竜也さん登場!白鳥あかねとのほのぼのトークにお客さんもみな笑顔!2014年の映画祭いよいよフィナーレ!

午後は、10月30日から続く企画「スクリプター・白鳥あかねの映画人生50年+SPECIAL」の最後を飾る作品『野良猫ロック 暴走集団 '71』の上映がありました。上映終了後は、お客さまも、映画祭スタッフ(特に女性スタッフ)も心待ちにしていた、俳優・藤竜也さんが登場!

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藤さんは10月25日と11月1日に上映した『私の男』、本日午前に上映された『ションベン・ライダー』、さらに昨年上映した『愛のコリーダ』にも出演されています。本作ではヒッピー集団のメンバー“マッポ”を演じた藤さんと、スクリプターを務めた当映画祭代表・白鳥あかね。どんなトークが繰り広げられたのでしょうか。

「おたがい青春でしたね…。」
44年前、スクリプターとして、役者として、それぞれの立場でこの作品の制作現場で仕事をしていたお二人。
当時の様子を語ります。

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白鳥「ものすごくしんどい映画だった。夜も眠れない。鉱山みたいなところでドンパチやってるシーンのときはお昼ごはんが食べられない。藤田敏八監督は自分が夢中になると時間の観念がない人で、スタッフは疲労困憊。みんなおなかが空いてるのにいつまでも撮ってるから、スタッフがお昼ご飯を食べたのは夜8時頃。藤さん覚えてました?」
藤さん「全然覚えてないです。」
白鳥「俳優さんてすごいですよね。わたしなんかよくスクリプターができたと思うくらい、撮影の中身はほとんど覚えてない。撮影期間は20日間くらい。日活はお金がない会社だったから少ない日数の中で詰め込んでやるわけです。スタッフが若いからがんばれたけど…あのときは藤田監督を鬼だと思いましたね…。」

藤田敏八監督は、なぜ“パキさん”と呼ばれているのか
 “パキさん”の愛称で親しまれていた藤田監督。不思議な呼び名の由来、気になります…。
藤さん「あの方はなんでパキさんて呼ばれるんですか?」
白鳥「国籍不明な雰囲気の人柄から、助監督になってすぐについたあだ名が“パキスタンの皇太子”。縮めて“パキさん”。」
藤さん「(日活の監督は)みんなユニークな監督でしたね。パキさんなんてほんと、得体が知れなかったもんなぁ…。」

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濃いキャラクターの俳優たちと…

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 席の横に飾られた『野良猫ロック 暴走集団'71』のポスターを眺めながら、「ほとんど死んでますよ、みんなね。すごいなー、この死亡率は。男で生きているの僕だけですよ」と藤さん。共演した俳優さんたちの多くは他界されています。藤さんから見た、個性的な共演者たちの印象とは…。

白鳥「久しぶりに観たけど、本当に不思議な映画ですよね。俳優さんたちも不思議。」
藤さん「原田(芳雄)さんは不思議な人でしたね。(映画の中で)どてら着てますよね。なんでどてらなんだろう…、僕には理解できなかったな。とんだ発想を持った、頭のいい方なんだと思いました。どてらだけで尊敬しちゃった。」
観客(笑)
藤さん「地井(武男)さん、散歩の番組(テレビ朝日の「ちい散歩」)あったでしょう、青年時代からあのとおりの人でした。とってもいい人。それから…安岡力也、彼は美しい青年でした。信じられないくらいハンサムで、勝てっこない。唯一勝てたのは腕相撲でした。みんな、仲良かったねぇ…」
白鳥「濃いキャラクターの人が集まってるから、今観ても面白いですよね。」

藤さん「郷^治とはすごく仲が良くてねえ…。僕が日活に入ったのは昭和37年。その2年後くらいに小林旭さんの映画『渡り鳥シリーズ』をリメイクしたテレビドラマに一緒に出たんですが、その頃から私生活でも仲良くなって。」
白鳥「気持ちいい青年でしたねえ、兄貴(俳優の宍戸錠さん)とちがって。」
観客(笑)
藤さん「いや、兄貴もいいですよ。僕より先輩だけどやっぱり仲良くしてもらって。ある日、“これからはミュージカルの時代で英語も話せないとダメだ”って言われて、錠さんと一緒に半年間、青山にタップダンスを習いに行ったことがあります。英語も習いに行きました。そのころ日活の俳優はみんな努力していました。実にならなかったけど…。」
観客(笑)

「ところで、こんな話してていいの?全然映画の話してないじゃない。」
共演者の話から、日活の俳優たちの話題へ。藤さんがタップダンスを習っていることを聞きつけた小林旭さんが、こっそり猛特訓して、すっかりモノにしてしまったことや、白鳥が『渡り鳥シリーズ』でスクリプターをしていたときに、前の場面と違う色の靴下をはいてきた小林旭さんを注意して、はき直させたというエピソードなど、話題は『野良猫ロック』からどんどん広がっていきます。
脱線モードを気にした藤さんに、「映画の世界で生きるとはどういうことなのか、みなさん聞きたいのだから、いいんですよ。」と白鳥。「スクリプター・白鳥あかねの映画人生〜」の企画は、白鳥がスクリプターをつとめた作品とそのゆかりの人とが、作品以外にもその時代のことや、当時の映画界の様子などを語る場でもあります。まるでどこかのバーでグラス片手に、白鳥あかねとゲストが思い出話に花を咲かせているところに居合わせたようなトークショーなのです。ユニークなエピソード数々に、会場は笑いが絶えません。

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「何十年たった今でもこうして藤さんと普通に話せるように、ほかの映画会社と違って俳優とスタッフとの垣根がなく、わきあいあいとして不思議な雰囲気だった。」と白鳥。今日こうしたトークショーが開けるのも、そんな“日活”という会社の雰囲気があったからかもしれません。

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白鳥「今日は、わざわざ藤さんにしんゆりに来ていただいて光栄です。お客さまのいきいきとした顔を見ていると、本当によかったなあと思って…。私も長生きしてよかったなあと思います。」

「なんか、聞いてみたいことあります?」
と、藤さんが促す形で観客席との質疑応答コーナーがはじまりました。
その一部をご紹介しましょう。

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Q.いろいろと体を鍛えられていると聞いたことがあるのですが、今も続けていらっしゃるのですか?
藤さん「今も週3日くらいやっています。今はもう伸ばさないと屈めなくなったり、単純な動きができなくなる可能性があるので、ストレッチなどを主にやっています。」

Q.英語も続けていらっしゃるんですか?
藤さん「ついこの間、“4ヶ月リスニングマラソン”を終えたところです。でも終わってから生の英語のニュースを聞いてみても、進歩してるのかなぁと思うんだけど…。でも、とても楽しいです。」

Q.藤さんが出演される作品に対して、奥様(元女優の芦川いづみさん)は批評とかされますか?
藤さん「僕の妻は、全ての作品に対して“すてき!”としか言いません。もう、それに支えられていますよ!」
このお答えには会場から大きな拍手が起きました。

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これまでに共演した女優について
質疑応答ではほかにも、藤さんに「本作で共演された梶芽衣子さんと、『私の男』で共演された二階堂ふみさんについてのご感想をお聞かせください」という質問もありました。

「梶さんは、40年前の彼女が今出てきても、おそらく通用しますね。ものすごくきれいで、モダンな感じでした。目つきがアップになったときの目の強さなんて、なかなか今ではいないくらいインパクトがありました。」

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ⓒ日活

「二階堂さんは得ですね。何もしなくても雰囲気が饒舌なんですよね。セリフがなくても意味ありげな…。普段は高校生くらいの普通の女の子ですが、芝居になると、出してくるものがものすごく強い。そういう人っているんですね。寡黙でも饒舌。感心しました。」

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なるほど。梶さんと二階堂さん、1970年代と2010年代、それぞれの時代にスクリーンの中で強い存在感を放ち、観客を魅了しているという点がよく似ていますね。

そろそろトークも終わりに近づいてきました。
白鳥「スタッフと俳優さんという立場にかかわらず、同じ釜の飯を食ってきた仲間というのは、青春を一緒に生きてきたというイメージがありますよね」
藤さん「そうですね。」
白鳥「特にパキさんみたいな監督の下、お昼も食べさせてもらえないような過酷な状況の中で、ものをつくっていたということは、今考えるととても得難い経験だったなあと思います。藤さんが今でもいきいきと活躍されているはすごくうれしいし、しんゆり映画祭のお客さまが、みんなこんなに笑顔で迎えてくれて喜んでくださるというのは、わたしもこの仕事をやっていてよかったなあと、つくづく幸せに思います。」

シネマウマも客席のみんなの笑顔が忘れられないウマ!
ということで、今年の最後の回もシネマウマが藤さんにプレゼントを渡しました。
そして、満員の客席からの大きな拍手に包まれながら、藤さんと白鳥あかねがゆっくりと会場を後にしました。

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さて、トークの中で藤さんからもお話がありましたが、
来年2015年4月より公開の北野武監督の最新作『龍三と七人の子分たち』は藤さんが主演されております。
また、テレビでも4月からはじまる時代劇ドラマで主演をされているとのこと。
楽しみに春を待ちましょう!

第20回しんゆり映画祭に来てくださったみなさま、
本当にありがとうございました。
外はすっかり寒くなり、新百合ヶ丘も大きなクリスマスツリーやイルミネーションが街を彩る季節になりました。
風邪には気をつけて、冬もたくさん映画を楽しんでくださいね。

→午前のプログラム『ションベン・ライダー』のレポートはこちら


posted by シネマウマ at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭レポート

【映画祭レポート (2014.11.3 アルテリオ映像館@)】『ションベン・ライダー』映画監督・細野辰興さんが助監督時代に見た、相米慎二監督と子役たち。

20回目のしんゆり映画祭もいよいよフィナーレ。映像館では70年代、80年代を代表するユニークな映画監督の作品をフィルム上映で観られる上に、貴重なお話を楽しく聞けちゃうトークショーで盛り上がりました!

午前は日本映画大学との共催企画、「子どもと映画制作シンポジウム」の前半がありました。最初の作品は相米慎二監督の傑作『ションベン・ライダー』。子どもを主役にし、演出した映画として今回の企画に絡めて上映しました。上映後は同作の助監督で日本映画大学准教授でもある細野辰興監督をお招きしてトークイベントも開催。

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細野監督は、『セーラー服と機関銃』(81)、『ションベン・ライダー』(83)、『東京上空いらっしゃいませ』(90)の助監督としても相米組の現場を経験されています。当時を知る細野監督ならではの、とっておきのエピソードが次々と語られました。

※「子どもと映画制作シンポジウム」後半(小劇場)のレポートはこちら

およそ30年ぶりに『ションベン・ライダー』をご覧になってトークに臨まれた細野監督。開口一番、「みなさん、この映画、話の流れはわかったんですかね?(笑)ここまで編集で切っていたんだと、久々に見てちょっとショックを受けました」とのコメント。実際に撮影されたのはなんと、およそ3時間40分を越えるほどの長尺だったそうですが、そのほとんどが編集でカットされ、結果的には118分という尺に収まっているそうです。

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「『ションベン・ライダー』の撮影現場で何が起きていたのか?」相米ファンならば、知りたいところ。まずは、主役の子役たちはどういう様子だったのか、お聞きしました。

「当時、主演の子どもたちは、夏休みの体験談のようなノリで、へこたれずに走り回ってやってましたね。相米監督は、現場で指示をしない人として有名。ほったらかして『いつまで同じことやってるんだ』とふいっとどこかへ行ってしまう。そして戻ってきて『まだ同じようなことやってるのか』。子どもたちとじゃれてはいたけれど、大体そんな感じでしたね。ラストカットを撮った後は、子どもたちに川に投げ込まれていましたよ。ざまぁみろと思いながら、私もそれを見てましたけど(笑)」
相米監督ならではの演出方法や、役者との接し方が垣間見えたエピソードでした。

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そして相米監督の現場の特徴で有名なのが、キャメラの長回しや、何度もリテイクを重ねて撮影に臨むといったあたり。『ションベン・ライダー』の時はどうだったのでしょうか。

「一番語り草になっているのは、多分、名古屋の熱田神宮の近くの貯木場のシーン。みんなワンシーンでどんどん飛び込んでいく。あれなんか、典型的なシーンじゃないですか。朝から夜まで撮影で、前日は何度もリハーサルを重ねていた。」

ワンシーンワンカットの撮影開始から終了まで、キャストもスタッフも一斉にぞろぞろと動いていくのが常だったという現場の様子を「運動会のような現場だった」と振り返った細野監督。「クレーン移動が多く、メイクさんも衣装さんも総出でクレーン車を押すこともあって、みんなで撮影を進めた、このカットで一回OKがでれば終わる、という一体感のようなものはあった」とのこと。

スタッフの大変さや相米組ならではの現場の雰囲気も伝わってくるお話でしたが、細野監督がはじめて助監督として正式に就いたのが本作。相米組のおもしろかったところをさらに一つ挙げていただきました。

「撮影もおもしろかったけど、仕上げがおもしろかった。先日逝去された編集の鈴木晄(あきら)さんが当時、脚本通りにつないだ最初の順繋ぎのラッシュは、3時間40分にもなっていた。それを初めて見たとき、新しいアクション映画ができたなととても驚いたことを覚えている」と語った細野監督。もう、その3時間40分の順繋ぎのフィルムはどこでも見られないとか!映画ファンとしては、ぜひ見てみたいですね・・・。

細野監督から見た、相米慎二という映画監督とは。「相米さんは、流ちょうにものをしゃべるタイプではない。冗談抜きで、ウーとかアーとか言うし、大人とはあまり会話をしたがらないタイプのような感じだった。
相米監督が現場で指揮官という感じではなかった。だからこそ、みんなでなんとかしてやらなきゃいけないな、という雰囲気になってくる、そういった雰囲気を作るのがうまかった監督だったなと思います。

自らを『普通の監督じゃないからな』とも言っていた。だからこそ、こういった映画ができたと思う、相米さんらしい映画だなと思って今日もこの作品を見ていた。撮ろうと計算して作ろうと思って作れる映画じゃない。そういった面白さがあると思う。」

そんな相米組での経験を経て、後に細野監督の作品に影響はあったのでしょうか?

「直接的には自分ではわからないけれど、映画のフレームに入っていなくてもいいんだという部分に関しては、平気にはなりましたよね。自分が何本か撮った時に、フレームの外みたいなものを利用して撮っているというのがわかった。『ションベン・ライダー』を今日見て思ったけれど、ほとんどフレームの中には映っていない。でも、観客にあるものを意識させるということが起きている。それは偶然か必然かわからないけれど、もしかしたら影響あるかもなと今日気づきましたね。」

お客様からも質問が。「本編の中で、子どもたちが歌い踊るシーンが多く出てきますが、あれは当初から決まっていたのか?」という質問には「当初から決まっていた、近藤真彦さんの『ふられてBANZAI』その歌ばっかり大人も子供も現場で歌っていた記憶がある」という回答でした。

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細野監督だからこそ知る、『ションベン・ライダー』の制作秘話、そして相米慎二監督の貴重なお話。充実した時間となりました。お客様も大変熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

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細野監督は2015年1月8日より、舞台『スタニスラフスキー探偵団』で原作・演出を手掛けられます。こちらも楽しみですね!



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細野監督、本当にどうもありがとうございました。

→午後のプログラム『野良猫ロック 暴走集団’71』のレポートはこちら


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2014年11月27日

【映画祭レポート(2014.11.3 アルテリオ小劇場)】「映画祭20周年記念セレモニー」「子どもと映画制作シンポジウム」

いよいよ最終日を迎えました。アルテリオ小劇場レポートです!

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風船シネマウマが左上に!

午前中は本祭プログラムとは別に、「KAWASAKIしんゆり映画祭20周年記念セレモニー」が行われました。

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朝から準備

最終日で疲労のたまる映画祭スタッフたち…しかし、そんな疲れを吹っ飛ばすシネマウマアーティスト(映画祭スタッフ)の力作が朝イチで到着!

それは…

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「招福!シネマウ舞」


間に合って良かったウマ!ちょくちょくブログに登場する後ろの彼女は進行さん。シンクロだウマ〜

「シネマウ舞」で福が招かれ気分ハッピー、そしてセレモニーの準備も整いました!

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準備万端

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式典開始。NPO法人KAWASAKIアーツ理事長・藤田朝也氏の挨拶で始まりました

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川崎市長・福田紀彦氏

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左から日本映画大学学長・佐藤忠男氏、公益財団法人川崎市文化財団理事長・北條秀衛氏、麻生区長・多田昭彦氏、川崎市長・福田紀彦氏

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ご来賓の挨拶に続き、当映画祭代表・白鳥あかねが挨拶しました。映画祭スタッフ、シネマウマもズラリ勢ぞろいしました。

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白鳥さんの挨拶

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この20年を振り返る白鳥さんの挨拶に、スタッフも感慨深い表情

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続けて、 KAWASAKIしんゆり映画祭顧問・武重邦夫氏の挨拶

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司会シネマウマもがんばりましたウマ☆

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「20周年」…20年経ったんだウマ。成人式だウマ。式典で、スタッフの気持ちも引き締まったひとときでした!



さて、今年のアルテリオ小劇場の最後を飾ったのは、「子どもと映画制作シンポジウム」後編。

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当映画祭の「ジュニア映画制作ワークショップ」が15年目を迎えた今年、全国のさまざまな「子どもと映画制作」の取り組みを紹介する目的で開催。映画制作者として舞台挨拶に来てくれた小・中・高校生、大学生のみなさんで壇上は盛り上がり、真剣ながらも笑いの絶えない、にぎやかなシンポジウムとなりました。

まず、「北海道コミュニティシネマ・札幌」制作の『茜色クラリネット』の上映、そして札幌の放送局が制作時の模様をレポートした番組の上映後、舞台挨拶が行われました。

※『茜色クラリネット』公式HPはこちら

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登壇者は北海道コミュニティシネマ・札幌代表で、『茜色クラリネット』プロデューサーの中島洋さんと、監督の坂本優乃さん(高校生)、主演の佐藤楓子さん(中学生)、録音の鈴木智美さん(大学生)、演出部の白田明花さん(高校生)、中島魁莉くん(高校生)、福田さとみさん(高校生)。

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中島洋さん

はじめに中島さんからこの作品を制作するに至った経緯の説明がありました。『茜色クラリネット』は、KAWASKIしんゆり映画祭の「ジュニア映画制作ワークショップ」をモデルに、2005年に札幌でスタートしたワークショップの集大成として制作されました。

続いて、制作した中学生から大学生までのみなさんが一人ずつ舞台挨拶。制作時は受験生だったという人もいて、撮影の合間に勉強していたという人もいたようです。

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「ひと夏をかけ、(札幌)琴似地域のみなさんと一体となって作り上げた作品を、多くの方に見ていただけてうれしいです」(坂本さん)
「昨日の東京公開に加え、このような場で上映されて本当にうれしいです。私たちの青春が詰まった映画です。何か心に残るものがあればうれしいです」(佐藤さん)。

中島さんによると、監督が主演を決める際、候補者から絞るのにとても悩んだが、最後は佐藤さんの笑顔が決め手となった、彼女の笑顔で現場が明るくなった、とのこと。

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「この映画を通して、子どもには『子どもが求めるものに対して、大人はプラスにして返してくれる』ということを気づいてほしい。大人には『自分が求めているものや、見ているものに一途な子どもの気持ち』を忘れないでいて欲しいと思います」(鈴木さん)
「助監督の仕事で、現場を明るくしながら楽しい雰囲気で作りたいと思っていたので、それが映画にも表れていたらいいなと思います」(白田さん)
「琴似はとっても面白い街で、都会の雰囲気がありながら、少し進んだら古い建物があったりするので、そんな街の雰囲気を楽しんでいただけたらと思います。みなさんの心に映画の記憶が残ってくれると嬉しいです」(中島さん)
「指導監督から『助監督は現場のリズムをつくるべきである』とアドバイスされ、明るい現場にするということに加え、良いテンポで現場が進むよう頑張りました」(福田さん)

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今回はクラウドファンディングによる支援で上京し、単に舞台挨拶だけではなく、東京在住の映画監督に作品を見てもらい、客観的な視点で意見・感想をもらうワークショップを実施したとのこと。中高生にとって、制作時には気づけなかった指摘や意見にとても刺激を受けたそうです。

最後には、恒例のシネマウマが登場!プレゼントが配られました!
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シマ模様が本物のフィルムでできているのに少々驚いた様子。

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さすが、映画を制作してきたみなさん!フィルムに興味深々☆

『茜色クラリネット』のみなさん、北海道からお越しいただき、ありがとうございました!



続いて、「こども映画教室」制作の『不思議なあめ』の上映。その後、舞台挨拶が行われました。
※「こども映画教室」のHPはこちら

登壇者は、こども映画教室代表の土肥悦子さん、『不思議なあめ』を制作した小学生(けいじゅくん、さといさん、ゆずさん、りんさん)、スタッフの中井聖満(きよみ)さん、鈴木愛理(えり)さん、馬場祐輔さん。

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土肥悦子さん

映画上映中は、みんなで大笑いしながら見ていました。さあ、出番ですよ〜☆
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はじめに土肥さんより登壇者の紹介がありました。今回登壇のメンバーは、活動時『オレンジチーム』だったということで、この日のドレスコードはオレンジ色だったそうです。メンバーのけいじゅくんが、オレンジ色の飴のかたちのバッジを全員分作ってきてくれました。

この映画で重要な役割を果たしていた「あめ」がかわいいバッジに!
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「寝ているシーンを、もっと寝ているように演技できればよかった」(けいじゅくん)
「大きいスクリーンで見たから、本格的に見られた」(さといさん)
「大きいスクリーンで見ると恥ずかしかった」(ゆずさん)
「やっているときはやりきった感があったけど、今見ると恥ずかしい」(りんさん)

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はじめはみんな照れくさそうにしていましたが、少しずつ感想や制作時の裏話を話してくれました。

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スタッフの鈴木さん、馬場さんも制作裏話を披露

そして、いつもの!シネマウマが登場〜♪
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シネマウマからキャンディーが付いたバルーンアートのお花のプレゼント!

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やっぱり囲まれるシネマウマ

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シネマウマ、大丈夫か(笑)

ちょっとシュールな?物語展開、一度聞くと忘れられないラストの歌…にぎやかで自由な発想のつまった本作、次作にも期待したいですね!オレンジチーム『不思議なあめ』のみなさん、ありがとうございました!



プログラム後半は、中島洋さん、土肥悦子さんとシンポジウム。司会はKAWASKIしんゆり映画祭のジュニア映画制作ワークショップの運営を担当している山本が担当しました。

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まず、土肥さんから「こども映画教室」について紹介がありました。土肥さんは石川県金沢市の映画館「シネモンド」の代表を務めており、「こども映画教室」は2004年に金沢でスタート。任意団体として「こども映画教室」を立ち上げ、金沢以外では昨年初めて横浜で開催。以後、東京、東北などでも開催されています。対象は小学生で、1〜3日間で映画制作を行っています。
※経緯については「映画祭スタッフのイチオシ映画紹介!」も併せてお読み下さい。→こちら

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KAWASKIしんゆり映画祭では、2007年に様々なワークショップ作品を紹介した際、金沢で制作された『I love you』という作品を紹介。この作品が「こども映画教室」の記念すべき第1作目だったのですが、当初、土肥さんは小学生が“映画制作”をすることにはあまり積極的ではなかったとのこと。あるとき、映画監督の中江裕司さんの「やってみようよ」との提案で制作してみたところ、とても面白いものが完成したのが始まりなのだそうです。

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続いて中島さんが、札幌での活動について紹介。札幌では「ジュニア映画制作ワークショップ」を参考に始まりましたが、開始にあたり、予算等について行政に相談した際、(この年の)活動は札幌市内のモエレ沼公園(彫刻家イサム・ノグチが設計した公園)でやってほしいという条件があったそうです。

川崎の「ジュニア映画制作ワークショップ」では作品の傾向として“日常の身近なテーマ”が多いのに対し、札幌では活動場所が限定されたことで、中学生が「公園を魔法の学校に見立てよう」といった発想が登場。中島さんは「場所を限定することで想像力が広がる」と感じ、それ以降場所を限定して活動を行ってきたとのことでした。

途中、金沢の「こども映画教室」の取り組みを紹介したNHKのVTRを観賞し、その後、山本から「ジュニア映画制作ワークショップ」の活動日程などを紹介。また、客席でご覧になっていた「こども映画教室」参加者のご両親からも、感想などを話していただきました。

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中島さんから、どの活動においても、家、学校(大人であれば職場)以外のサードプレイス(第三の居場所)をどうやって作れるかが大事なことで、そうしたサードプレイスの場づくりは(ワークショップに限らず)文化活動がとても有効であるということを発信していきたい。そして、地域の中に入っていって活動することもとても大切なことだ、というお話がありました。

客席からは、「ワークショップに参加した子どもたちが、どのような道に進んでほしいと思いますか?」という質問がありました。これに対し土肥さんは「活動を通して映画館に足を運んでくれるようになればうれしいが、映画人のたまごを育てたかったわけではなく、映画の道に進んでほしいといったこともあまり考えていなかった」との回答。

中島さんも同じく「映画人を育てるためにやっているわけではない」としながら、「ワークショップの経験者から映画の道に進みたいという子が出てきたとき、そこはきちんとフォローしてあげなければならない。いつか見た映画は、いずれ頭の記憶としては忘れてしまうが、心の奥底の記憶は忘れないでいるように、私たちの“場づくり”は、子どもたちへ心の記憶を作っている場なんだと思う」との回答でした。

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制作過程や場所、参加者の年齢など、それぞれ環境が異なりながらも、「子どもと映画制作」に携わる関係者同士で多様な意見が交わされたこのシンポジウム。映像教育の今後を考える上でとても参考になったのではないでしょうか。また中島さんの「サードプレイスの場づくり」の話は、市民ボランティアの映画祭スタッフにも心に残るものでした。登壇者の皆さま、会場に足を運んでくださった皆さま、ありがとうございました。

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以上、11月3日のアルテリオ小劇場レポートでした!
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2014年11月23日

【映画祭レポート(2014.11.2 アルテリオ小劇場)】ジュニア映画制作ワークショップ発表会&澤登翠さんの活弁上映会

 小劇場レポートです。

 

 11月2日は中学生たちの晴れ舞台、

ジュニア映画制作ワークショップ発表会の日でした。

 

 朝からたくさんのお客さまたち。

 今年で15年目のジュニア映画制作ワークショップは、夏休みに中学生たちが集まり、プロの指導のもと、脚本作りから撮影、演技、編集まで、映画制作のあらゆる工程を体験しながらチームで1本の短編作品をつくる活動です。いまや全国的に注目されている活動で、子どもたちを対象にした映画制作講座を開く団体や学校が各地に増えています。



 開演前は劇場入口に飾られた中学生による映画制作レポートを、お客さまたちがじっくりと眺めていました。今年はポスターやチラシも手づくりして、広報も中学生たちが自ら行いました。


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ご家族やお友だちをはじめ、この活動に興味をもって来てくれた方々で小劇場の客席も埋まりました。


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今年の作品は『未来選択』。総勢23人のチーム「黄色いペンギン」が力を合わせてつくった“時空を超える”SF作品です。


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〜ストーリー〜

 運動も勉強も人づきあいも苦手な中学生の少女の前に、ある日突然現れた未来人。彼は「未来選択」というサービスを仕事にしているようで、少女も彼の売り文句に乗せられ、数々の未来のシチュエーションから自分の理想のものを選び、さっそくタイムスリップ!

思い通りの自分を手に入れたかに見えたものの、それはそれでなかなか大変なようで…。

 

 上映終了後、舞台の上には「黄色いペンギン」のメンバーと、今年も講師を務めた映画監督で日本映画大学講師の熊澤誓人さんが登場。同じくメンバーの中学生による司会で舞台挨拶が始まりました。


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 まず、撮影中何をしたか、何を感じたかを含めた自己紹介を中学生が一人ずつ話しました。

続いて熊澤さんが、今年の活動を振り返りました。

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 舞台挨拶が終わると、今年のメイキング映像の上映がありました。

 講師とともに中学生の技術指導にあたっていた日本映画学校の卒業生で、現在は映像の仕事で活躍中の方が、夏休みの中学生たちの奮闘ぶりを、楽しく魅力たっぷりのドキュメンタリー風にまとめあげた、こちらもかなりの力作です。中学生たちの珍プレー・好プレーに会場からも温かい笑い声が…。

 

 メイキング映像の上映終了後、再び中学生たちが舞台へ。


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 司会はワークショップのOBの高校生にバトンタッチ。さらなる制作秘話を中学生たちから引き出します。

 質疑応答コーナーもあり、客席からの質問に中学生たちが答えました。質問だけでなく、励ましとお褒めの言葉をかけてくださる方もいました。

 

 映画の中の印象的なセリフ、未来を選択した少女をタイムスリップさせるときに、未来人が言う決まり文句を「チェックイン」にした理由についての質問に、脚本担当の中学生が、「未来に行く場面を想像すると、ホテルに行く情景が浮かんだから」と答えました。そこから派生して、未来から現在に戻る場面に“リセットリターンチケット”なるものが登場することになったようです。ユニークな発想にSF作家の才能がうかがえる!?

 未来人役の中学生はこのセリフを言うときなどの役づくりでは、「カッコつけるのが難しかった」とのことでした。普段なかなか言わないこと、やらないような態度を体験できるのも映画づくりの醍醐味です。


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 「みなさんは普段どんな映画を観ていますか?」との質問もありました。

 ワークショップに参加する中学生たちは、観るのもかなりお好きなようです。

 ジュニア映画制作ワークショップ参加中学生たちから出た「観た映画」、「好きな映画」、そして「おすすめ映画」は…

『レ・ミゼラブル』『英国王のスピーチ』『ゼロの焦点』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

『グラン・トリノ』『桐島、部活やめるってよ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『インデペンデンスデイ』など…。アニメ系も人気で、『サマー・ウォーズ』、ジブリ作品は特に人気があるようです。

 

 映画監督をなさっているというお客さまからは、カット割がすばらしく、将来自分の仕事が脅かされてしまうと思うほど、大人顔負けの仕事をしているとのご感想もいただきました。

 このワークショップで映画づくりをしながら、中学生たちは映画制作を覚えるだけでなく、人としても成長しています。

 ワークショップ体験者の中には、中学校を卒業後も映画祭のボランティアスタッフとして、今度は中学生を支える立場になったり、野外上映会やこの本祭をつくる立場になる人もいます。年の離れた映画祭スタッフにもひけをとらない活躍をみせる彼ら、彼女らの頼もしさを見ていると、大人たちとプロフェッショナルの仕事に触れるこのワークショップの意味がとても大きいものなのだと感じられます。

 

 発表会の最後は日本映画大学学長の佐藤忠男さんによる講評がありました。佐藤さんもこのジュニア映画制作ワークショップを長年見守り続けてきた一人です。


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 このワークショップについては、映画大学の学生が実習で使うものと同じ機材で、学生が撮るのと同じスタイルで制作し、シナリオも自分たちで書くという本格的な活動であり、制作は「どんな映画なら作る価値があるのかを考える」ところから始まると説明していました。

 また、毎年作品を観ていると進歩が見えてくるので、佐藤さんご自身にとってもひじょうに勉強になっているとのこと。


 そして、中学生を支える大人たちは、ロケで場所や建物を使わせてもらう際に、町の人に交渉したりすることもあるため、自然に地域とのつながりも生まれ、町の人たちにとっても自分たちの住む地域を再発見できる機会になるとも話していました。

 ジュニア映画制作ワークショップは、そこに参加する大人たちにとっても郷土愛を育む場になっているのですね。


 さらに、この発表会のような“晴れがましい場”に子どもを立たせてあげることがとても大事なのだということも話していました。


 今年の作品『未来選択』については、「“人を不幸にすることで自分が幸せになる”というものの考え方の出発点など、今まで以上にテーマが明確で、哲学的になっていた」とのことでした。

発表会が終わるとロビーで観にきてくれたお客さまとの交流もありました。


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そして、3階で軽く打ち上げ。中学生たち、おつかれさまでした。


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 ジュニア映画制作ワークショップのブログにも、今回のレポートが公開されました。

こちらもぜひご覧ください。

 また、内容充実の公式サイトもあります。
 こちらでは、中学生の素顔や講師、スタッフの話もたっぷりお楽しみいただける番組「ゆるふわトーク」やポッドキャストもありますので、よろしくウマ!



小劇場、午後のプログラムは今年で7回目となる、活動弁士・澤登翠さんの活弁上映会が開催されました。


ロビーではグッズ販売も。「買うなら今!」な充実した品揃えです。

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今年の作品は『沓掛時次郎』


長谷川伸原作の股旅物です。この戯曲はなんども映画化されていますが、今回上映されたのはその第1作目です。昭和の初めの1929年、今から85年前に作られた作品です。このブログをお読みになっている人はこの映画より後に生まれた人がほとんどだと思います。主人公、沓掛時次郎を演じるのは大河内傅次郎です。

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〜ストーリー〜

沓掛の時次郎は、一宿一飯の義理により博徒の三蔵を切りつけるが、死に際に身重の女房と息子を伯父のもとに届けてほしいと頼まれる。その三蔵の遺志を守って、遺された三蔵の妻と息子の三人で旅をする…。


しんゆり映画祭の活弁上映は生演奏付き。

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今年はミュージシャンの湯浅ジョウイチさんがギターと三味線を演奏し、股旅物の雰囲気をもりあげました。今回はお一人での演奏ですが、湯浅さんは無声映画の伴奏楽団「カラード・モノトーン」を結成され、全国各地の活弁上映会で演奏を続けています。その楽団も今年、私たち映画祭と同じ20年目を迎えたそうです。

澤登さんの活弁は、ほんとうに名調子です。聴いているうちに、従来の活弁からイメージするものではなく、超一流の講談を聴いているような感じでした。これに湯浅さんのギターと三味線が映像と活弁を盛り上げていくわけで、この雰囲気はライブでしか味わえません。素晴らしい、映像、活弁、演奏のコラボでした。

上映終了後、映画祭代表、白鳥あかねと澤登翠さんの対談がありました。


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 白鳥は、古い貴重な映画を後世に伝えていくことは大切なことで、この映画祭の目玉として今後も活弁付き上映を続けていきたいと語り、澤登さんは、この映画祭に呼んでいただくのは大変光栄なことで、しんゆり映画祭がずっと続いていき、多くの人に活弁付き映画の楽しさを味わっていただくよう努めたいと話されていました。


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 シネマウマも活弁大好き!これからもずっと応援していくウマ!


 以上、小劇場レポートでした。


 映像館レポートはこちら


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2014年11月22日

【映画祭レポート(2014.11.2 アルテリオ映像館)】「今こそ、台湾映画!」特集フィナーレへ! 映画を通して知る台湾の歴史と現在

映画祭レポート、今回は11/2(日)の「アルテリオ映像館」の模様をお伝えします。連休2日目、前日の雨は上がりました!

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秋もいよいよ深まってきました

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フル稼働のシネマウマ〜

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あきた十文字映画祭様、NPOしんゆり芸術のまちづくり様からのお花が会期中の会場を彩りました。誠にありがとうございました!


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この日1本目は「しんゆりセレクション」より『グォさんの仮装大賞』。こちらは涙あり、笑いありの心温まる中国映画。午前中から多くのお客さまにお越しいただきました!



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2本目は『恋恋風塵』。台湾の名匠ホウ・シャオシェンの1986年の作品です。上映後、映画評論家で日本映画大学学長の佐藤忠男さんのゲストトークが行われました。

本作については、「まるで日本と変わらない。日本人を純粋にしたような…日本人を田舎に帰して、昔の生活に戻すとこうなる、というような生活が、実に、それなりの誇りを込めて描かれている。我々は見ていて気持ちがいいです」と佐藤さん。

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佐藤さんによると、「台湾映画は世界で一番日本映画に近い」そうです。本作は「自分と結婚してくれるものだと思ってた女の子が、違う男の人と結婚しちゃって泣く話。こういうところは日本と似ていると思います。つまり、婚約したわけではないが、親しく付き合っていたわけだから、当然、結婚してくれるものだとばかり思っていた。『I love you』などという決まり文句は日本語にはないが、そういう気風は、台湾も同じですね。『そういうときはちゃんと約束しておくものだ』という習慣がない」「そういうことを本人同士がハッキリさせない。『ハッキリするのは恥ずかしい』という感覚は、まったく日本と共有しております」。

また、男の主人公・アワンが兵役に出ますが、台湾映画で「兵役」が描かれる際の特徴があるそうです。それは「中途半端な青春」。「大学に行くにしろ、就職するにしろ、兵役を終えるまでは、青春時代はまだハンパな状態なんですね。若者は『一体、自分は何なんだろう』と、ブラブラしているより仕方がないという感じ。そういう青春を扱った映画が、台湾映画には多いです」。

「本作は、非常に情感豊かな…つまり生活のすみずみを非常に細やかに、愛着を持って見つめて、そして、そういうポジションで見れば、どの人もどの人もみんなそれぞれ、いい人に見える。そういう意味では、まれに見る作品であると思います」。こうした成瀬巳喜男監督、小津安二郎監督などの日本映画にも通じる、情感豊かな作品で、台湾映画は次第に世界に知られるようになったとのこと。

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ホウ・シャオシェン監督やをはじめとする“台湾ニューウェイブ”と呼ばれる世代の監督たちが、80年代に注目を集めるまでの「台湾映画」の紆余曲折について、貴重なお話が語られました。「台湾映画」の紆余曲折は、日本と中国による占領で複雑化した台湾人のアイデンティティーと密接な関係がありました。

日清戦争後の1895年から、1945年の日本の敗戦まで、台湾は日本の植民地でした。日本は台湾人に映画を作らせず、台湾人に日本語教育を徹底する強圧的な政治を行いました。映画も「『日本語を勉強すれば日本映画を観られる、だから中国語の映画を見る必要はない』と」。日本の敗戦後、中国国民党軍が台湾にやってきて、台湾人は当初、解放軍と思って歓迎したのですが、中国軍の厳しい取締りと言論統制に遭いました。その後起きた暴動をきっかけに、国民党は知識人狩りを行いました。ホウ・シャオシェン監督のヴェネチア国際映画祭グランプリ受賞作『非情城市』(1989)はその当時を描いた作品だそうです。

日本の植民地化政策に続く中国国民党軍の弾圧・戒厳令で、台湾人のアイデンティティーは複雑化しました。

「台湾の民衆は、自分たちがどう生きるべきかわからなくなった。つまり日本や中国、そのどちらにも翻弄され、『俺たちはどうしたらいいんだ』ということになったわけです」。戒厳令下の生活は何十年も続き、台湾は苦難の時代を過ごしてきました。やがて87年に戒厳令が解除され、台湾の独自性や文化の開放を求める動きが生まれた頃に作られたのが、『恋恋風塵』だったと、佐藤さんは語ります。

また、劇中に使われていたある映画に関する、台湾映画史の貴重なお話も。野外上映会のシーンで流れていた映画は『あひるを飼う家』(1965)。当時、国民党政府が北京語で奨励して作らせた「健康写実路線」映画の中の最大のヒット作と言われた作品です。

佐藤さんによると、国民党政府は、一緒に本土から逃れて台湾に渡ってきた上海の映画人に、北京語で映画を作らせていました。多言語国家の中国で、映画は言語統一に大きな役割を果たしており、国家の文化を統一する意図で「トーキー映画は北京語」が必須となっていました。国民党政府は台湾語の映画には補助金を出さず、北京語の映画には補助金を出すという政策を行い、日本敗戦後にヒットしていた台湾人による台湾語の映画はほとんど無くなっていったそうです。

そんな時代に生まれた『あひるを飼う家』、実はこの映画の助監督は若き日のホウ・シャオシェン!「健康写実路線」は当時の台湾の映画批評家たちからは「健康で写実などできるわけがない」と揶揄されていましたが、「それにうまい解決を与えたのがホウ・シャオシェンたち若手監督」だったそうです。

「ホウ・シャオシェンら若手監督たちが何をやったかというと、例えば『恋恋風塵』では、家庭生活では台湾語を喋り、学校や会社、役所にいると北京語を喋っている、そういう言葉の使い分けをやりました」。

「それが映画を見る人に対して、本当に親切かどうかわかりません。片方の言葉がわからない人がいっぱいいるんですから。けれども、これは本当のリアリズムなんです。台湾の現実の生活がそうなんですから。そういう映画を作るようになってから、台湾映画の水準はがぜん、急に上がりました。つまり本当のリアリズムで映画を作ることを、80年代当時、若い監督たちはやるようになりました」。

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複雑化した台湾人のアイデンティティー、その後の文化解放の時代に生まれたホウ・シャオシェンの『恋恋風塵』。映画祭で上映した台湾映画『GF*BF』も戒厳令時代から民主化に向かう時代の台湾を舞台にした物語でしたが、佐藤氏のお話は今年の特集「今こそ、台湾映画!」を総括してくださるような、聞き応えのあるものでした。

まだまだ、お話を伺いたかったのですが、お時間が来てしまい…。プレゼンターのシネマウマが登場ー!
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シネマウマ、今回は喋りました。「佐藤先生、いつもありがとうございます。また来年もぜひいらしてください♪」

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トーク終了後も、話に花が咲いていました。佐藤さんを囲んで質問したりサインをお願いするお客さまの輪が広がり、映画祭らしい光景でした。

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佐藤さん、今年もお話ありがとうございました!



3本目は、今年の目玉「いまこそ、台湾映画!」特集のラストを飾る『南風』

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おかげさまで満席の大盛況!上映後は萩生田宏治監督をお招きし、ゲストトークを行いました。

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本作は台北から日月潭まで、台湾の美しい海岸線の風景をたどりながらサイクリングしていく物語ですが、監督も大学時代に北海道一周や、四国、九州などをサイクリングしたことがあったそうです。

とはいえ、日本=台湾合作の監督を務める不安はなかったのでしょうか?萩生田監督は、林海象監督の『わが人生最悪の時』で助監督を務めていたとき、永瀬正敏さんの相手役が台湾の俳優さんであったり、『海ほおずき』(1996)で唐十郎さん、原田芳雄さんなどと台湾ロケをしたりと、日台合作での映画制作は経験があり、「今回、自分が台湾に行って、何ができるかをチャレンジしたいと思って」監督を受けたそうです。

台湾では、大学4年生ぐらいになると、台湾を1周するのが流行っているそうです。「『自分の国をちゃんと見て見たい』みたいなところが、本気であるみたいなんですよ。自分たちの国の美しい景色を、自分の足で廻って見てみたい、と。さっき、『恋恋風塵』を拝見した後の佐藤忠男先生のお話を聞いて、やっぱり、国のアイデンティティー、『自分は台湾に住んだ人としてどうしようか』みたいな意識は本当に強いんだなあと思いました」。

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ロケハンは「1ヵ月後に撮影開始」という慌しさだったそうです。カメラマン・長田勇市さんが沖縄本島より台湾に近い石垣島出身で、「7月1日〜10日の間がいちばんキレイだ」と一言。「ホントかい、と思ったんですけれど(笑)、本当にそうでした。10日を過ぎたら雨季に入って雨も降り始めるし。本当に、お昼頃になるとちょっと崩れてくるんですが、午前中の天気がものすごく、恐ろしいぐらいにキレイで」。

キャストについては? ヒロインのテレサ・チーさんは台湾では有名な青春映画『九月に降る風』でデビュー、今やハリウッド映画『トランスフォーマー/ロストエイジ』にも出演する、世界が注目する女優。『南風』では天真爛漫なイメージですが、実際も役柄と似ていたとか。「喋ると、「好(ハオ)」「好(ハオ)」って。「わかった」という意味らしいんですけど。かわいくそう言うんだけど、実際、全然別のことをやる。ホントに「好」か?みたいな(笑)」。しかし、撮影当時は20代ということもあり、中学校に行って学生を観察し、10代の感覚を研究するなど、熱心な一面があったそうです。

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本作は黒川芽以さん演じるもうひとりのヒロイン・藍子と、テレサ・チーさん演じるトントンの女性同士の友情物語でもあります。女性同士の友情の描き方は、役者さんの様子を見て、また話を聞きながら演出していったとのこと。黒川さんは8歳から女優をやっていて、すでにベテラン。「現場に若い女優さんがいると、既に現場のいろいろを読めてしまう自分がいて、相手にゆずってしまって…」という、映画の藍子と同じような「仕事のできる女の悩み」のようなものを黒川さんから聞いているうちに、台本で決まっていた「30代」の設定を改めるなど、話を聞きながら演出を変えていったそう。「ほぼ順取りで、黒川さんも、だんだん、テレサとの距離やこの作品でやりたいことが出てきたみたいだったから、そういうのをスクリーンに映して皆さんにお届けしたほうが、面白いんじゃないかと思って」。

上海でも撮影経験がある萩生田監督。海外と日本の撮影で違うことは?「すごく感じるのは、もしかしたら日本の現場が一番特殊なのかなあ、と。僕らは、効率的にやるのはすごく上手。僕も、『効率的にやっていかないとこなせていけない』というところがある。ただ、ちょっと、『効率的になること』が目的になっちゃう。それは、監督が弱い、という話になるんですが、『この時間で何をやるか』を目的化しちゃうみたいなところって、もしかしたらあるのかなって」。

台湾のスタッフたちのおおらかな仕事ぶりに触れ、そう感じたとか。道に迷っても笑っているスタッフ、ビンロウを噛むと20qスピードの上がる運転手さん、普段は映画評論の仕事でよく喋るのに、ロケ交渉などの場では全然喋らずケンカして帰ってくる制作部さんなど、「なんだか、忘れられない人がすごく多い感じがあります(笑)」。

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萩生田監督は、6年前に『コドモのコドモ』を撮ってから、難しい題材を映画で伝える手ごたえとともに、伝える難しさを感じていたこともあったそうです。「『次、何やろう』と考えているときに、少し慎重になり過ぎているところが自分でも気づかずあったんですね。藍子じゃないですが、ちょっと『前に進めなくなってるなあ』という感じはあって。今回、『藍子が旅をしているそのものを撮っていこう』と思い切れたのは、やっぱり台湾の人たちのおおらかな感じ。思い切って、その場その場の発想を意外と受け入れてくれたというのがありました。『しょうがないなあ』と思ってるのかもしれないが、そういうおおらかなところで一緒にやれて、作品として乗り越えられたことは、ちょっと子どもっぽい言い方ですが、台湾の中から力をもらえたんじゃないかなと思っております」。

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お客さまからは「日本人と、台湾人のスタッフの比率はどれくらい?」(「6(日本):4(台湾)ぐらいで始めたが、撮影10日目ではなぜか台湾のスタッフが増えていた(笑)」)、「台湾、中国などアジアの国々の合作に監督として大きな意図、意義はあるのでしょうか?」(「台湾の場合、政府の文化交流事業とは別のところで唐十郎さん、林海象さんなどが一歩一歩現地と築いてきたものがある。あるなら、がぜんやる。誰かが小さくても残していかないと、という意識は仕事のモチベーションとしてある」)、などなど、次々に質問が飛び出し、活発な質疑応答タイムとなりました。

最後に、プレゼンター・シネマウマが登場♪
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監督に握手していただいて感激ウマ☆ありがとうございました!

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トーク終了後も、萩生田監督に次々とサインを求めるお客さまの輪がロビーに広がっていました!

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萩生田監督、シネマウマ、映画祭代表・白鳥あかね、市民プロデューサー(司会)・みなと

これにて今年の台湾映画特集は終了。台湾の昔と今を映画を通して知る、大盛況、充実のゲストトークリレーとなりました。萩生田監督、ありがとうございました!



さて、ガラリと雰囲気を変え、今日のラストは『濡れた欲情 特出し21人』。白鳥あかね・当映画祭代表の自伝『スクリプターはストリッパーではありません』のタイトルにもなった逸話のある作品です。

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「最前列、かぶりつきでどうぞ!」とご案内の市民プロデューサー

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『スクリプターはストリッパーではありません』を自ら宣伝の白鳥あかね代表。名著ですのでぜひお読みください!

以上、11/2 映像館レポートでした!
posted by シネマウマ at 10:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭レポート

2014年11月13日

【映画祭レポート(2014.11.1 アルテリオ映像館)】しんゆりアヤカノ最終上映、『私の男』をバリアフリーで、「東京フィルメックスinしんゆり」は海外からのゲスト、ウワサのアイドル映画『あの娘、早くババアになればいいのに』も監督&俳優陣が勢ぞろい!

小劇場に続き、映像館レポートだウマ!

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朝一番は『怪しい彼女』。しんゆり最終上映だウマ!
駆けつけてくれたみなさんありがとウマ!
映画祭スタッフの“なりきりオ・ドゥリ”コスプレも見納め。
楽しんでいただけましたウマ!?

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2番目の上映は初日のイオンシネマでも大好評の『私の男』副音声付き上映。

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10月25日の初日は熊切監督を迎えて盛況だった『私の男』。今年、数々の賞に輝き、しんゆりでも開催前から楽しみにしていた方がたくさんいた作品でした。この日は副音声付き上映もあり、満員御礼。

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第3回の映画祭からスタートしたバリアフリー上映。ボランティアスタッフも経験を重ね、今や映画祭を飛び出し、アートセンターの通常上映などでも活躍しています。副音声や字幕によるバリアフリー対応ができる作品の幅もどんどん広げております。ご利用いただく観客のみなさまのご意見やご要望も糧に、誰もが同じスクリーンで多くの映画を楽しめるよう、工夫と努力を重ね続けていきたいと思います。

3番目の上映は毎年恒例となった企画「東京フィルメックスinしんゆり」の『記憶が私を見る』。海外からのサプライズゲスト、 監督・主演のソン・ファンさん舞台挨拶に登場しました!

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20回目のしんゆり映画祭で、久々に来日ゲストによるトークが実現!

東京フィルメックスのプログラム・ディレクター市山尚三さんが司会を務めてのミニトーク。中国生まれのソン・ファンさんですが、フランス語が堪能。『恋恋風塵』 のホウ・シャオシェン監督がジュリエット・ビノシュを主演にフランスで撮った作品『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』にも出演しています。この日は川崎市アートセンターの村上さんの通訳を介して、ソン・ファンさんのお話を聞きました。
この映画では、ご自身以外の出演者は実際の家族や親戚などのソン・ファンさんにとって身近な人たち、つまりプロではない役者固められています。本作以前には短編映画でご自身の肉親を撮ったこともきっかけだったようです。さらに家族以外の人や親戚、その友だち、兄弟、その何世代と続く人たちを撮りたい、それらの人たちがどう家族に寄り添い生活しているのかを撮りたいと思ったそうです。また、それぞれの人生で出会う死の現実に直面したことで、この映画のシナリオを書くに至ったとのこと。自分が聞いてきたことなどの構造を生かしてまとめあげるように書いたそうです。
撮影現場では、ソン・ファンさんの家族は以前の短編での経験があり、カメラの前には慣れていましたが、他の人ははじめての役者体験。ときどき休憩を入れながらゆっくりと、さらに、撮影チームの人数も少なくするなど、それぞれの人ができるだけ緊張せずリラックスして撮影に臨めるように心がけていたそうです。
また、本作の録音技師は山下あやさんという日本人女性で、ソン・ファンさんの北京の映画学校時代の同級生とのこと。このころの出会いがきっかけで、今回の制作に参加してもらうことになったそうです。

短い時間でしたが充実したトークの最後は、お決まりのシネマウマからのプレゼント贈呈。

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客席の後ろから現れたシネマウマにビックリ、そして爆笑のソン・ファンさん。「アリガトウ、アリガトウ…スゴイね…」と日本語で何度もシネマウマに声をかけてくれました。喜んでいただけてうれしかったウマ!

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トークの後も、ロビーで観客との交流は続きます。質問をしてくれた方に、丁寧に答えくれるソン・ファンさん、本当にあたたかい方でした。

4番目は、公開以来カルト的人気を誇る、21世紀型アイドル映画がしんゆりに登場!
アイドルを目指す娘とアイドルファンの義父の、親子愛とも異性愛ともとれる絶妙な関係性を描くコメディ作品『あの娘、早くババアになればいいのに』が上映されました。

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上映終了後は、頃安祐良監督とヒロインの蟹沢アンナ役を務めた女優の中村朝佳さんのトークショーを開催。

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お二人の登場の際は、あらかじめ映画祭スタッフが用意したサイリウムのライトを観客のみなさんが振って会場を演出。この一瞬だけアイドルのライブ会場と化した客席の間を、頃安監督と中村さんが入場されました。

この日はさらに、本作に出演の俳優お二人も急遽トークに参加。血のつながらない娘をアイドルに育てようとするアイドルオタク平田役の尾本貴史さんと、アンナに猛アタックする男・清水役の切田亮介さんが客席からスクリーンの前に登場。監督と主要キャストが並ぶ豪華なトークショーが始まりました。

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撮影は5日間というタイトスケジュールの中、寒い季節に深谷市で行われました。キャスト、スタッフのみなさんにとっては厳しい状況。
そんな中でも、「脚本がおもしろかったから、それに身を委ねてやっていました。…撮影中はセリフが聞こえるだけでおもしろかった。」と中村さん。
「もらった時点でおもしろい脚本だったので、(作品が)おもしろくなかったら俺のせいになるんじゃないかという重圧があり、元々アイドルに詳しくなかったこともあって、役作りには悩みました。でも、撮影に入ってからは割り切って役に入ることができました。」と尾本さん。
監督もあえてアイドルオタクとはどういうものかは説明することはなく、尾本さんが想像した平田像が映画の中に現れていたようです。それはアンナ役の中村さんにも同じで、役づくりに関して監督からの注文などはほとんどなかったそうです。
頃安監督はご自身もアイドルファンで、乃木坂46のPVなどアイドルとのお仕事もされていますが、「おふたり二人に役をおまかせした時点で、好きにやってもらったほうがおもしろいと思いました」とのこと。

演技をはじめて間もないころに本作出演(当時18歳)となった切田さん。
「緊張しましたが、何もかもはじめての経験をさせていただき、この映画にはホント、感謝しかないですね。」
監督は映画が完成するまでは切田さん演じる清水の登場シーンがいちばん心配だったそうですが、
「完成したらみんな清水くん大好きになった」と中村さんもおっしゃるように、監督も納得できるシーンができあがったそうです。
中村さんは撮影前に切田さんとダンスの練習をすることもあったとか…。
客席からは切田さんへ拍手とともに、「よかったよ〜!」と声がかかり、「ありがとうございます。もっとがんばります!」と切田さんがはにかむ場面も。トークゲストの中で一人だけスーツ姿の切田さんに監督から「そういえばなんで今日スーツなの?」とつっこみ。
「僕、近くに住んでいて、もしかしたら舞台挨拶呼んでくれるんじゃないかと思って(笑)、ちょっと気合い入れて来ました。」と切田さん。
愛されキャラっぷりで会場を笑いと拍手で湧かせました。切田さん、これからも応援してますよ〜!

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本作の公開後の各地での’アンコール上映時はミニライブや握手会もおこなったそうです。
中村さんも役になりきりアンナの新曲(!)を披露したり、ファンと握手をしたり…。映画を観に来たお客さんもアイドルとなったアンナのファンになりきってライブを盛り上げたり、握手を求めます。中村さんは、ライブや握手会という状況に身を置きながら、“握手をする側”という役と“される側”という役があり、お互い演じている感覚が新鮮だったそうです。
「お客さんも一緒に盛り上げて支えてくれて、一緒につくりあげているのを感じました」とのこと。
頃安監督、尾本さん、切田さんも握手やサインに応じ、
「握手会にはよく行くけど、握手をされる側ははじめて。楽しかった。」と監督。「握手をしてもらう側も芝居をしているんだね」というお客さんの言葉が印象に残っているそうです。
「僕にまで握手を求めてくれる人がいて、うれしかったです。…こっちから何かをしなければいけないと思っていたけど、握手を求めてくれるお客さんの方からいろいろお話をしてくれて…逆に元気をもらうというか、この作品をやってよかったとは撮影中も思っていましたが、次に何かをやろうという力をもらったことが大きかったですね。」と尾本さん。
「握手とかサインを求めていただくのは初めてで…。もうちょっとかわいいサインを思いつかないといけないなと思いました(笑)。気持ち悪い役なのに、笑っていただけて、毎回あたたかい目で見てくれて、ありがたいなと思いました。」と切田さん。

トークの終盤は客席との質疑応答コーナー。
監督のアイドル好きはどのくらいのものなのかという質問に、
「アイドルを好きになったのは3、4年ほど前。最近は乃木坂46が好きで、ライブや握手会などにもよく行きます。映像もつくらせてもらって、(仕事と)リンクしはじめてきたので叩かれないようにしないと(笑)」と監督。

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強烈なインパクトを与える本作のタイトルの由来についての質問も。
監督曰く、映画の中の平田をはじめ、男目線の女の子に対する思い、「ババアになってもこの娘にのことが好きだよ」という思いを込めたとのことでした。タイトルとポスターを見て映画を観に来る方も多かったそうです。

笑顔の絶えない仲良しムードのトークショーでした。頃安監督、中村さん、尾本さん、切田さん、ありがとうございました!観客のみなさんもアイドルファンなりきりでのサイリウムの演出にご協力ありがとウマ!

終わった後もロビーで観客との交流が続いていました。

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中村朝佳さんは現在発売中の「映画芸術449号」に寄稿しています。ぜひ読んでみてウマ。

11月1日(土)の映画祭レポート映像館編はいかがでしたか?11月最初の3連休はこうして華々しくスタートしました。
後日、11月2日、3日のレポートも続々UPしていきますのでお楽しみに!
同じく映画祭レポート小劇場編もあわせて読んでウマ〜!
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2014年11月11日

【映画祭レポート(2014.11.1 アルテリオ小劇場)】『THE DEPTHS』で濱口竜介監督の才能に触れる!

11月1日(土)レポートからは川崎市アートセンター・アルテリオ映像館/小劇場の会場別にお伝えします。
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今回はアルテリオ小劇場のレポートです。

すっかり秋も深まってきました
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1本目は「今こそ、台湾映画!」特集からの作品『光にふれる』
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同時期に開催されていた東京国際映画祭では、チャン・ロンジー監督の最新作『共犯』が2回とも満席とのことでしたが、前作にあたる本作、見比べた方は作風の違いに驚かれたのでは?

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10/30の回は平日ながら満席、今回も広い会場を埋め尽くすほどのお客さまが集まりました。
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ご来場ありがとうございました!



本日最後の上映は『THE DEPTHS』。同日、映像館で上映された『記憶が私を見る』と同じく「東京フィルメックス in しんゆり」の作品で、2本ハシゴした方もいらっしゃいました!

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上映後、東京フィルメックスプログラムディレクター・市山尚三さんによるゲストトーク。この企画も5年目、市山さんも当映画祭ですっかりおなじみになりました。

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市山さんが濱口竜介監督を知ったのは、2008年の東京フィルメックスコンペティション部門で上映された、監督の東京藝術大学大学院修了制作『PASSION』だったそうです。(※東京フィルメックスHPから当時のトークの模様が見られます。→こちら

『THE DEPTHS』は濱口監督の出身大学・東京藝術大学と韓国国立映画アカデミーの共同製作。原案が先にあり、後から濱口さんが監督に決まったとのこと。劇中も日韓の俳優が互いの言葉がわからないという設定で共演しますが、現場ももちろん日韓スタッフが共同で製作。韓国の撮影監督と意見が食い違うなど、撮影はかなり大変だったらしいとのこと。

「しかし監督のキャリアとしてはよかったのでは」と市山さん。「同じ大学の気の合う、スタイルを完全に理解している仲間同士で撮るのとは違い、国籍も考え方も異なるスタッフ同士でディスカッションし、切磋琢磨しながら作ったことは本人の財産にもなるのでは」。白鳥あかね当映画祭代表が「そういう緊張感みたいなものが出ている気がした」と評したことを紹介、予算も日数も限られた中、これだけの完成度で、作家性も貫いていることを高く評価されていました。

「新人監督とベテランカメラマンの組み合わせなどで、よくあることですが、監督が弱くカメラマンの意思だけが貫かれると、映画として観たときにバラバラになっていることがあります。しかし、この映画は、確実に濱口さんが監督としてコントロールして作った映画のように思えます。現場で、濱口監督が簡単に折れずに撮影を進めたのではないかと思います」。

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暗室で浮かび上がる写真、波止場など、印象的なシーンの多い本作。「多分、彼はものすごくたくさん映画を観ているので、吸収して上手く使っている感じがします。『映画的な』感じがするところがすごく多い」。

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濱口さんは、本作のように日韓の大学同士の合作や、映画学校のワークショップの作品などが多く、いわゆる商業的な映画を撮っていない「非常に珍しい経歴の監督」だそうです。「もう普通のプロの仕事をしてもおかしくない人。個人的には商業映画でどういうものを撮るのか見てみたいという気にすごくさせる監督ですね」。

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邦画(自主映画)の公開本数が増加傾向だという話も。ミニシアター、レイトショーなどで、公開自体は昔より容易になっていますが、「これだけの本数の映画が一挙に出てくると、そこから目立たないとあっというまに消えていってしまう。公開の機会が増えるのはいいことだが、そこから突破するのがすごく難しくなっているというのはありますね」と市山さん。

宣伝費や宣伝する人がいなくて埋もれてしまっている作品が多く、東京フィルメックスで高評価を得ながら配給が決まらなかった『THE DEAPHS』もその一つだとのこと。制作者の責任ではなく、映画祭やミニシアターなど、周囲が見せる機会を作ることの重要性を語られました。

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また、昨年始動した、日本のコンテンツの海外展開を助成する経済産業省のプロジェクト「J-LOP」の企画に濱口監督が参加したエピソードを紹介。濱口監督のほか、『サウダーヂ』の富田克也さん、『ほとりの朔子』の深田晃司さん、『イエローキッド』の真利子哲也さん、『虹色★ロケット』の伊藤峻太さんの5人が今年のカンヌ映画祭に行き、企画をプレゼンしたそうです。

同プロジェクトの選考委員でもあった市山さんは、昨今のアート界の厳しい状況の中、いきなり海外で出資者が現れる結果にはならないだろうが、「絶対に彼らの財産になる」と、このプロジェクトの意義を感じていたそうです。

「日本で映画を作っていると、自分たちだけの世界に閉じこもって、他者がどう思っているかを気にしないで作ってしまうことが多い。ここでは、企画段階で、しかも海外の人からシナリオの感想や意見を細かく聞ける。『このシナリオじゃあダメだ』とか『このほうが面白い』とか。『思わぬことをみんなが考えている』というのがそこでわかり、それは絶対に財産になる。濱口さんがそれを活かしてくれればいいなと思うし、活かせる才能であるのは間違いないと思います」。

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市山さんのお話、そして斬新な演出と目が離せないストーリーで一度観たら誰かと話し合いたくなる本作!映画を学ぶ学生さんは特に勉強になったのでは?

最後にシネマウマが登場〜!
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市山さん、今年も興味深いお話をありがとうございました!

濱口監督は次作の製作中とのことで今回はお越しいただけませんでしたが、映画祭スタッフ一同、応援しておりますー!
濱口監督・本作の詳細については「映画祭スタッフのイチオシ映画紹介」もごらんください!→こちら

市山さんの「第15回東京フィルメックス」は11月22日からで、ただ今チケット発売中。篠崎誠監督が大胆なスタイルで撮った『SHARING』や、『凶悪』『ソラニン』などの脚本家・橋泉監督の『ダリー・マルサン』など、この機会にゼヒという作品が目白押しだそうです。しんゆりの次は有楽町へゴー!

というわけで、7日目・小劇場レポートでした!
posted by シネマウマ at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭レポート

2014年11月08日

【映画祭レポート(2014.10.31)】『スクリプターはストリッパーではありません』企画・編集の高崎俊夫さんが白鳥あかね代表に聞く!6日目レポート

こんにちは、シネマウマです。

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今回は10月31日(金)『濡れた欲情 特出し21人』上映後、平日プログラムで唯一行われたゲストトークの模様をレポートします!



この日、『恋恋風塵』『モンガに散る』『濡れた週末』に続き、最後の4本目は『濡れた欲情 特出し21人』

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1974年の日活ロマンポルノ作品で、当映画祭代表・白鳥あかねさんがスクリプターをつとめています。

今回は、その白鳥あかねさんをゲスト、著書『スクリプターはストリッパーではありません』(国書刊行会・刊)の企画・編集の高崎俊夫さんを聞き手に、上映後のゲストトークが行われました。

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お客様と一緒に作品を鑑賞するため、席に着く上映前の白鳥さん。

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日活がロマンポルノへと路線変更した当時、多くのスタッフや役者が辞めていったそうです。でも、日活は止めることはせず、残るか去るかを自由に各自に選択させ、自然と最後にどうしても映画を作りたい人たちが残ったということです。自然とふるいにかけられていったので、レベルが高くなり、ロマンポルノは高評価を得ることとなったと白鳥さん。メジャー時代の日活よりも、ロマンポルノ時代のほうが心に焼き付いているとのことです。
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本作の神代辰巳監督の話もいろいろとあり、著書のタイトルにもなった「スクリプターはストリッパーではありません」という言葉を先輩から告げられたというエピソードでは、大きな笑いを誘っていました。

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「こういう人生体験はロマンポルノという特殊な世界に入らなければ、絶対に死ぬまで得られなかったと思うので、ある意味、普通の人の3倍も4倍も、たくさんの経験をさせていただいたので、とっても幸せだったと思っています」と、笑顔で話している白鳥さんがとても印象的でした。

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トークの最後にシネマウマから、高崎俊夫さんへプレゼント。
トークの後は、『スクリプターはストリッパーではありません』の販売&サイン会もありました。

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20周年を迎えたしんゆり映画祭の記事も!

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各メディアで取り上げられた書評も紹介させていただきました。

書評などについてはFB記事にもまとめていますので、併せてごらんください!→こちら

『スクリプターはストリッパーではありません』 ぜひご一読を!以上、31日トークのレポートでした!


posted by シネマウマ at 16:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭レポート

【映画祭レポート(2014.10.28)】映画祭の長年の取り組み「保育サービス」

シネマウマです。レポートは最終日まで続くウマ!気長に待っててくださいウマ〜☆

さて、平日(10/28〜31)も連日、会場の川崎市アートセンターはお客さま、シネマウマで盛り上がりました。
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長年、野外上映会でお世話になっている「パン カンガルー」さんに作っていただいた特製・20周年記念「シネマウマパン」ウマ〜☆
(※リンクは新百合ヶ丘情報サイト「新百合ヶ丘商店会オフィシャルサイト新ゆり・ねっと」さんより)

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こちらは29日(水)『怪しい彼女』でお客さまをお迎えしたアヤカノ・シネマウマ隊♪



今回は28日(火)に実施された「保育サービス」についてレポートします!

KAWASAKIしんゆり映画祭では、映画上映に関連して、どなたでも気軽に映画を楽しんでいただくための取り組み「しんゆりバリアフリーシアター」を行っています。

そのひとつが「保育サービス」です。子育て中で、なかなか映画を観ることができない人のために、お子さんを預かるという内容です。子育て中の主婦(主夫)にとっては育児から解放され、2時間をまるまる映画に集中できるわけですから、ホットする時間にもなります。

今年は10月28日(火)10時からのプログラム『8月の家族たち』で実施されました。

川崎市アートセンターのフリースペースの一角に保育コーナーを設けて、上映中、お子さんをお預かりしました。定員は5名。保育は保育グループ「ジャンケンポン」のベテランスタッフの皆さんにお願いしました。
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ほとんどは2歳ぐらいのお子さん。おもちゃで遊んだり、スタッフに童話を読んでもらったり、楽しく過ごしていました。なかには「ママ、ママ」と泣きだす子もいますが、そこはベテランスタッフ、うまくあやしていました。

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その他、「しんゆりバリアフリーシアター」では、視覚に障がいのある方のための「副音声ガイド付上映」も長年行っており、今年は11/1(土)『私の男』にて実施、おかげさまで満席となりました。

今後も、どなたでも気軽に映画を楽しんでいただくための取り組みを続けていきます!
posted by シネマウマ at 13:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画祭レポート